こんにちは。塾予備校部門枚方本校の福山です。
うたたね『出家の決意』の口語訳&品詞分解です。
うたたねは阿仏尼による日記文学で、鎌倉前期の成立です。
前半、後半に分けてご紹介します。ぜひテスト対策にお役立てください。
✿ 本文:太字、現代語訳:赤字 ✿
うたたね『出家の決意』
春ののどやかなるに、
のどかな春の日に、
何となく積もりにける手習ひの反故など破り返すついでに、
何となくたまってしまった手すさびの紙反故などを破り捨て破り捨てするついでに、
かの御文どもを取り出でて見れば、
あの方からのお手紙の数々を取り出して見ると、
梅が枝の色づきそめし初めより、
(去年の春に)梅の枝(につぼみ)が色づき始めた(恋の)初めから、
冬草枯れ果つるまで、折々のあはれ忍びがたき節々を、
冬草が枯れ果て(恋が終わ)るまで、その折々の抑えきれない思いのあれこれを、
うちとけて聞こえ交はしけることの積もりにけるほども、
親しくやりとりし申し上げたことが(手紙の中に)積もっていたありさまも、
今はと見るはあはれ浅からぬ中に、
(出家を決意した)今は限りと思って見るのは感慨も浅くない中に、
いつぞや、
(ある手紙を手に取って、この手紙は)いつ(もらったの)だろうか、
常よりも目とどまりぬらんかしとおぼゆるほどに、
どうして今ふだんよりも目にとまったのかしらねと思われるうちに、
こなたのあるじ、「今宵はいとさびしくもの恐ろしき心地するに、
こちら側の部屋の主の女房が、「今夜はひどくさびしくてなんとなく恐ろしい気がするから、
ここに臥し給へ。」とて、わが方へも帰らずなりぬ。
(あなたも)こちらでお休みなさい。」と言って、自分の部屋にも戻らないことになった。
あなむつかしとおぼゆれど、せめて心の鬼も恐ろしければ、
ああ厄介だと思われるけれど、(人知れず出家を決意しているため)とても気がとがめるので、
「帰りなん。」とも言はで臥しぬ。
「(部屋に)帰るつもりだ。」とも言わずに(そこに)横になった。
人はみな何心なく寝入りぬるほどに、
(同室の)人がみなそんなこととも知らずに寝入ってしまったころに、
やをら滑り出づれば、灯火の残りて心細き光なるに、
そっと(部屋を)滑り出ると、灯火が残って心細い光を放っているので、
人やおどろかんとゆゆしく恐ろしけれど、
同僚の女房が目を覚ますのではなかろうかとひどく恐ろしいけれど、
ただ障子一重を隔てたる居所なれば、
ただ襖一枚を隔てている自分の部屋なので、
昼より用意しつる鋏、箱の蓋などの、
昼から用意しておいた鋏や箱の蓋などが、
ほどなく手にさはるもいとうれしくて、髪を引き分くるほどぞ、
すぐ手にふれるのもたいそううれしくて、(早速)髪を引き分けるが、
さすがそぞろ恐ろしかりける。削ぎ落としぬれば、
そのときは、さすがにわけもなく不安にかられた。(髪を)削ぎ落としてしまうと、
この蓋にうち入れて、書き置きつる文なども取り具して置かんとするほど、
この蓋に入れて、書き置いていた手紙なども取り添えて置こうとするときに、
出でつる障子口より、火の光のなほほのかに見ゆるに、
(自分が)出て来た襖の出入り口から、灯火の光がなおかすかに(射しているのが)見えるので、
文書きつくる硯の、蓋もせでありけるが、かたはらに見ゆるを引き寄せて、
手紙を書きつけた硯で、蓋もせず置いてあった硯が、そばに見えるのを引き寄せて、
削ぎ落としたる髪をおし包みたる陸奥国紙のかたはらに、
削ぎ落とした髪を包んである陸奥紙の端に、
ただうち思ふことを書きつくれど、
ただふと思いついたことを書きつけるが、
外なる灯火の光なれば、筆の立ち所も見えず。
外にある灯火の光なので、(暗くて)自分の書いた字も見えない。
なげきつつ みを早き瀬の そことだに 知らず迷はん 跡ぞかなしき
嘆きながら川の早瀬の底に身を投げたとしても、そこがどこかさえわからず、魂が迷う死後のことも悲しく思われるよ。
身をも投げてんと思ひけるにや。
(あのときは)身を投げてしまおうと思ったのだろうか。
※ 品詞分解はこちら
→うたたね『出家の決意』(前半)
古文:現代語訳/品詞分解全てのリストはこちら⇒https://www.prep.kec.ne.jp/blog/28470
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