こんにちは。塾予備校部門枚方本校の福山です。
増鏡の口語訳&品詞分解です。
「増鏡」は南北朝時代の歴史物語です。
先日までの大鏡などを合わせた四鏡のうち、成立順、内容順にも最後にあたり、出来事を年代順に書く編年体で書かれています。
ぜひテスト対策にお役立てください。
✿ 本文:太字、現代語訳:赤字 ✿
増鏡『時頼と時宗』
故時頼朝臣は、康元元年にかしら下ろしてのち、
故〔北条〕時頼朝臣は、康元元年〔一二五六年〕に出家してのち、
忍びて諸国を修行しありきけり。
人目につかぬように隠れて諸国を修行して歩き回った。
それも、国々のありさま、人の愁へなど、
それも、国々の様子や、人々の嘆き訴えることなどを、
詳しくあなぐり見聞かんのはかりことにてありける。
詳しく探し求めて見聞きするということの計画であったのだよ。
あやしの宿りに立ち寄りては、その家主がありさまを問ひ聞く。
粗末な家に立ち寄っては、その家の主の様子を尋ねて聞く。
理ある愁へなどの埋もれたるを聞きひらきては、
道理のある愁訴などで取り上げられずにいるものを聞き出しては、
「我はあやしき身なれど、昔、よろしき主持ち奉りし、
「私はいやしい身分であるが、昔、身分の高い主人をお持ち申し上げたのだが、
いまだ世にやおはすると、消息奉らん。
その方が、まだ世に栄えていらっしゃるかと(思うので)、手紙を差し上げよう。
持てまうでて聞こえ給へ。」など言へば、
(それを)持って(鎌倉へ)参上して(事情を)申し上げなさい。」などと言うので、
「なでふことなき修行者の、何ばかり。」
「たいしたことのない修行者が、どれほど(のことができるだろうか、いや、できるはずがない)。」
とは思ひながら、言ひ合はせて、その文を持ちて東へ行きて、
とは思うけれども、(仲間と)相談して、その手紙を持って鎌倉へ行って、
しかじかと教へしままに言ひてみれば、
こうこうと(修行者の)教えたとおりに言ってみると、
入道殿の御消息なりけり。「あなかま、あなかま。」とて、
(それは)入道殿〔時頼〕のお手紙であったのだよ。「ああやかましい、静かに。」と言って、
長く愁へなきやうにははからひつ。
(役人はその後)長く愁訴のないように処置した。
仏神などの現れ給へるかとて、みな額をつきて喜びけり。
(訴え出た人々は)仏神などが現れなさったのかと言って、みな額をついて喜んだ。
かやうのこと、すべて数知らずありしほどに、
こういうことは、全くたくさんあったために、
国々も心づかひをのみしけり。
諸国の役人たちも(悪い政治を行わないように)もっぱら心配りをした。
最明寺の入道とぞいひける。それが子なればにや、
(この時頼のことを)最明寺の入道といった。その方の子だからであろうか、
今の時宗朝臣もいとめでたき者にて、
今の(執権の)時宗朝臣もたいそう優れた者であって、
「本院のかく世をおぼし捨てんずる、
「本院〔後深草院〕がこのようにご出家なさるということは、
いとかたじけなくあはれなる御ことなり。
たいそう恐れ多くお気の毒なことである。
故院の御おきては、やうこそあらめ。なれど、
故院〔後嵯峨院〕のご遺勅は、理由があるのだろう。けれども、
そこらの御兄にて、させる御誤りもおはしまさざらん。
(本院は)たくさんの皇子たちの御兄上であって、これといったご過失もおありにならないだろう。
いかでかたちまちに名残なくはものし給ふべき。
どうして急に(皇位と)関わりなくおなりになってよいだろうか、いや、よくない。
いとたいだいしきわざなり。」とて、新院へも奏し、
絶対にあるまじきことだ。」と言って、新院〔亀山院〕にも奏上し、
かなたこなたなだめ申して、
(本院と新院の)あちらもこちらもとりなし申し上げて、
東の御方の若宮を坊に奉りぬ。
(後深草院の皇子である)東の御方の若宮を(後宇多天皇の)皇太子にお立て申し上げた。
十月五日、節会行はれて、いとめでたし。
十月五日、立太子の節会が行われて、本当に祝賀すべきことである。
かかれば、少し御心慰めて、
だから、(本院は)少しお心の憂さを晴らして、
このきはに強ひて背かせ給ふべき御道心にもあらねば、
このときに無理にご出家なさらなければならない仏道のご信心でもないので、
おぼしとまりぬ。これぞあるべきことと、
(ご出家を)思いとどまりなさった。これが当然なことだと、
あいなう世の人も思ひ言ふべし。
無遠慮に世間の人も思ってほめるにちがいない。
※ 品詞分解はこちら
→増鏡「時頼と時宗」
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