最近私が研究でよく使っている”PCR法”

こんにちは!大阪府枚方市にある塾予備校、KEC枚方本校のアシスタント伊藤です!

 

京都大学薬学部4回生で、この4月から研究室に配属し、化学と生物学を使った研究を行っています。

 

新型コロナウイルスのPCR検査。マスク生活が始まってこの2年、よく耳にするかと思いますが、みなさん「PCR」ってどんな反応かご存知でしょうか?

高校生物でも習うかと思いますが、今回は「PCR法」についてご紹介したいと思います。

 

まず、PCRの正式名称は知っていますか?

 

正解は……

英語では“Polymerase Chain Reaction”、日本語にすると「ポリメラーゼ連鎖反応」と言います。ポリメラーゼはDNAやRNAなどの核酸を伸長する酵素です。PCRはDNAポリメラーゼを使ってDNAを指数関数的に増幅する方法です。

PCR検査はウイルスのゲノムを検出するために「PCR」という反応を用いてウイルスのDNAを増幅します(コロナウイルスはRNAウイルスなので逆転写でRNAからDNAを合成してからPCRにかけます)。唾液などに含まれるウイルスだけでは少ないので検出できません‥‥。

 

難しいかもしれませんが入試科目に生物がある人は頑張って読んでみてください!

 

PCRに必要なもの:

・増幅したいDNA(増幅したい配列を含むDNA)
・プライマー
・DNAポリメラーゼ
・dNTP
・マグネシウムイオン
・バッファー

プライマー:伸長の起点となる短いDNA鎖。目的の塩基配列の初めと終わりの塩基配列に相補的に結合するように設計します。DNAを構成するのは4種類のデオキシヌクレオチドであるため、塩基数をxとすると、設計した配列がある確率は1/2xとなります。例えば2000塩基対からなるDNAを増幅したいとすると、211が2048なのでプライマーに11塩基対以上が望ましいといった感じです。

dNTP : DNAを構成するデオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dTTP、dCTP、dGTPの4つ)

 

一般的な3ステップの例

  1. 95℃      Denaturation (変性)                     DNA二本鎖の解離
  2. Tm-5℃  Annealing (アニーリング)           プライマーとDNAの結合
  3. 72℃      Extension (伸長)                          5‘から3‘へDNA鎖の伸長

Tm : melting temperature (融解温度)
半分のDNA鎖が解離する温度。プライマーのTm値によってannealing 温度を設定します。

 

 

二本鎖を解離するのに90度以上にする必要があるため、高温に耐えうる好熱菌由来のポリメラーゼが広く用いれられています。そのため至適温度が高く伸長反応も比較的高温で行います。

 

PCR法はこの3つのステップを繰り返すごとにDNAが2倍に増幅されていく単純な仕組みの反応です。PCRについてこんなにシンプルな反応なんだと思っていただけたら幸いです^^ こんなに単純な方法ですが、生物学にとっては大革命であり、DNA化学での手法開発への貢献(PCR法の発明)でキャリー・マリス氏が1993年にノーベル化学賞を受賞しています。(同時にDNA化学での手法開発への貢献(オリゴヌクレオチドによる部位特異的突然変異法の確立とそのタンパク質研究への発展に関する基礎的貢献)によってマイケル・スミス氏がノーベル化学賞を受賞)

 

 

今や誰でも名前は知っているPCR。ただそれがどのような反応なのかいまいちよく知らなかったという方も多かったのではないでしょうか。このブログで少しでも科学に興味を持っていただけたら嬉しいです!!