経済学と数学の関係

みなさん、こんにちは。KECくずは本校の津田です。

数学の講師である私から、なぜ、数学を学ぶのかという視点から、経済学と数学の関係について紹介します。私は大学で情報学を、大学院で経済学を学びました。今日は、経済学という学問について、そして、経済学にとって、実際にどの程度の数学が必要になってくるのかということを紹介していきます。

私の専門は、マクロ経済学・国際経済学・統計学がベースになっています。

今現在の、経済学の最先端の研究は、ほぼほぼ数学の世界です。数式なしでは経済は語れません。しかし、実際に経済を動かして政策を考えるとなると、それでもし実際に景気が悪くなってしまったら、国の存続に影響を与えかねません。そこで、モデル(数式:フレームワーク)を作って、そこから計算し、必要であれば、コンピュータでシミュレーションすることで、ある程度の政策の答えを知ることができます。

経済学者は、現在、そういったモデルを考えて、計算・シミュレーションをするということをしています。どのようなモデルが、実際経済を反映しているか、といったことが永遠のテーマとなっていて、日々研究が行われています。ただし、実際の経済において、人がどのような行動をするのかということは、実際に的中させることは不可能なので、「消費者(モノを買う人)と生産者(モノを売る人)は、大体こういう行動をとるよね」という仮定をおいて、計算を行います。

実際、経済学の研究は主に2種類に大別されます。1つは、上記の通り数式を考えて、より正確な・分析のしやすいモデルを考える理論分析です。一方、実際のデータを見つけ・集めたデータから統計ソフト等で関係を整理し、政策提言を行う実証分析という手法もあります。研究者の中には、理論専門の方、実証専門の方がいます。単に計算だけで証明できても、実際にデータが当てはまらないと意味がないので、経済学はこの両輪が双方に発展することで研究が深まっています。

さて、これらを考えるためにはどのような数学的知識が必要になるかということを少し紹介します。

人々はどのような行動をとるかという問いに対して、必要になってくるのが微分の知識です。経済学の世界では、大抵の人は自分の効用(嬉しさ・満足度)が最大になるように行動するという原理にのっとって、分析が行われます。微分を学ぶと、1度微分をしてゼロになる点(極大値)を考えますが、この原理を元に、人々がどのような時に最適な行動をとるのかということを考えることになります。

経済学というと、お金・株価・貿易ということを連想すると思いますが、ミクロ経済やマクロ経済という学問では、入学したらこういう話を聞かされることになります。もちろん、これらの知識をもとに、金融工学や国際貿易といった実際の生活に直結してくる分野もあり、とても幅広いです。ミクロ経済・マクロ経済・計量経済(統計)をはじめ、ゲーム理論・国際経済・金融・財政・都市経済・地域経済・労働経済・医療経済・行動経済と多岐にわたります。

経済学は、数学を用いるので、思いのほか論理的な学問です。学部で習う範囲の教科書は、何十年も変わっていません。

それでは、実際に学部経済学においては、どの程度の数学的知識が必要になってくるのでしょうか。大まかにいえば、数Ⅱ・数Ⅲあたりの微分(商の微分)、そして、線形代数(またの名を行列:ベクトルのちょっとした応用)、確率・統計が必要になります。確率・統計数Aの条件付き確率や数Bの(ほとんどの学校では習わない)確率分布の知識がもとになっています。データから分析を行う時には統計学の知識は欠かせません。また、どのような確率で、人々が行動をとるのかという分析も行われます。(大学院に行くと、大学の解析学や線形代数・統計学の知識が必要になります。)

経済学部に行こうと思ってた受験生・高校生・中学生のみなさん。「めちゃくちゃ大変じゃん」「ついていけるかな」と思ったかもしれませんが、こういった数学の勉強は大学の授業でカリキュラムとして必ず組み込まれているので、問題ないと思います。日本では、経済学部は文系の位置づけなので、数学が得意でなくても経済学部に進学する受験生が大勢いるので、そこまで心配することはありません。

どうしても数学が苦手、どちらかというと歴史の方が好きという人は、経済に関する歴史を学べる授業・コースもあります。歴史に関する書物から研究を行う分野になるので、歴史好きにとっては、ハマるものがあると思います。

昨今、ビックデータと言われる時代なので、統計学やデータに関する科目はこれから必要になってきます。そういった職業を視野に入れたい人・論理的思考を身に付けたい人は、是非経済学部への進学を考えてみてください。公務員を目指す人は公務員試験の経済学の問題は、大学の経済学が分かっていれば(数Ⅱ・数Ⅲあたりの微分と文字を含んだ連立方程式が解ければ)、ほぼほぼ解けるのでおススメです。

少し長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。経済学部のことや数学のことでもっと知りたいことがあれば、質問に来てくれたらと思います。