こんにちは。塾予備校部門枚方本校の福山です。
源氏物語の葵の口語訳です。
牧野高校の方はテスト範囲ですので、ぜひ参考にしてくださいね!
✿ 本文:太字、現代語訳:赤字 ✿
源氏物語「葵」
大殿には、御物の怪いたう起こりて、いみじうわずらひ給ふ。
大殿の館では、物の怪がひどく起こって、(葵の上が)とてもお苦しみになる。
「この御生霊、故父大臣の御霊など言ふものあり。」
「ご自分の生霊や、亡き父大臣の死霊だなどと言う者がいる。」
と聞き給ふにつけて、思しつづくれば、
と(六条の御息所が)お聞きになるにつけて、お考え続けになると、
身ひとつの憂き嘆きよりほかに、
自分の身のつらさや嘆きより他には、
人を悪しかれなど思ふ心もなけれど、
他人を不幸になってしまえなどと思う気持ちもないけれども、
もの思はにあくがるなる魂は、さもやあらむ。
物思いで悩んだあげくにさまよい出て行くとかいう魂は、そのようなことなのであろうか。
年ごろ、よろづに思ひ残すことなく過ぐしつくれど、
長年、さまざまに物思いを残すことなく過ごしてきたけれど、
かうしも砕けぬを、はかなきことの折に、
こんなにも思い乱れることもなかった、ちょっとした事の機会に、
人の思ひ消ち、無きものにもてなすさまなりし御禊の後、
あの人(=葵の上)が無視し、いないものとして扱った態度であった御禊の後、
ひとふしに思し浮かれにし心、
その一件によって落ち着かなくなりなさった心が、
鎮まりがたう思さるるけにや、
鎮まりそうもなくお思いにならずにはいられないせいであろうか、
少しうちまどろみ給う夢には、かの姫君とおぼしき人の、
少しうとうととお眠りなさる夢には、あの姫君(=葵の上)と思われる人の、
いと清らにてある所に行きて、
たいそう気品があり美しくしていらっしゃるところに行って、
とかく引きまさぐり、現にも似ず、
あれやこれやと引きかきまわし、目の覚めている状態(=本当の姿)とは違って、
猛く巌きひたぶる心出で来て、
猛々しく激しい一途な心が出て来て、
うちかなぐるなど見え給ふこと、たび重なりにけり。
荒々しくつかんで引っ張る様子などを御覧になることが、度重なってしまった。
「あな、心憂や。げに、身を棄ててや、
(六条の御息所は、)「ああ、つらいことよ。なるほど、(魂が)身体を捨てて、
往にけむ。」と、うつし心ならずおぼえ給ふ折々もあれば、
出て行ってしまったのだろうか。」と、正気でなくお感じになられる時も度々あるので、
「さならぬことだに、人の御ためには、
「そうでもないことでさえ、(わざわざ)他人のためには、
よさまのことをしも言い出でぬ世なれば、
良いようなことは言い出さない世の中なので、
ましてこれはいとよう言ひなりしつべきたよりなり。」
ましてこれは、たいそう上手く悪評を立てることができる良い機会だ。」
と思すに、いと名立たしう、
とお思いになると、たいそう噂になりそうで、
「ひたすら世に亡くなりて後に怨み残すは世の常のことなり。
「一途に、この世からいなくなって後に怨みを残すのは世間でよくある事だ。
それだに、人の上にては、
それ(死んだ後に、恨みが現世に残っていると嫌がられること)でさえ、人の身の上においては、
罪深うゆゆしきを、うつつのわが身ながら、
罪深く不吉であるのに、生きている状態の我が身のままで、
さるうとましきことを言ひつけらるる宿世の憂きこと。
そのようないやなことを噂される因縁のつらいことよ。
すべて、つれなき人にいかで心もかけ聞こえじ。」
もういっさい、薄情な方(=光源氏)に、どうあろうとも心をおかけ申すまい。」
と思し返せど、思ふもものをなり。
とお考え直しになるけれど、思うまいと思うのも物思いするということなのである。
おどろおどろしきさまにはあらず、
(葵の上の方は、)ひどく苦しいという様子ではなく、
そこはかとなくて、月日を過ぐし給ふ。
特に悪いこともなく、月日を過ごしなさる。
大将殿も、常にとぶらひ聞こえ給へど、
大将殿(=光源氏)も、いつもお見舞い申し上げなさるけれど、
まさる方のいたうわずらひ給へば、
さらに大事な方(=葵の上)がひどく患っていらっしゃるので、
御心のいとまなげなり。
お気持ちの休む間もないようである。
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